優しい距離 | 裏日記

優しい距離

昨日早上がりの彼を誘って飲みに行った。

夏みたいに暑いし

家の中だとお互い息が詰まりそうだった。

お気に入りの沖縄料理店に連れて行って

高いけどご満悦の彼。

足に腫瘍ができているけど

検査以来悪い病気ではないということで

悲壮感は消えて

私達はここのところなんだか優しい。

多分私が優しく居れる距離を作ったせいだろう

というか今までは、ただの私の一人相撲。

向かいのバーにはしごして

彼はタンカレージン、私はシングルモルト

ロックでゆっくり頂きつつ。

絆が欲しい私は

もっと彼を知りたい

彼のことを話してほしい

奥にある気持ちを。

いつも彼とがっつり話そうと飲みに行くけど

「重いよ~」

で流され

でも昨日は自然とそういう話になった。

マスターと話していると自殺の話になった。

昔自殺を考えるほど自分を追い込んだことがあるって

いつか聞いたことがあった。

だから彼の心が少し硬くなったのに気づいた。

でも今日は少し話したそう。

「私死にたいって考えに至ったことがないからわかんないなぁ」

「俺はあるよ♪」

知ってるよ。

「自殺やめる時って、他のしがらみを振り切って自分のことを大事って思うこと?生きたいって?」

彼は答えなかった。

しばらく間をおいて優しく聞いた。

「大切なもの抱え込んでどうしようもなくなって

死を選んでしまうのかな。」

「全部どうでも良くなるんだよ。」

「どうでも良くなる前に全部大事にできる道が見つからないんだろうか?」

「そうなんじゃない?」

彼は多分

まだ迷いの中にいると思う。

「私が二度とそんなことにはさせないよ。道を見つける。」

自然と思いが言葉になる。

彼の奥に少し灯りが灯った。

 

帰り

「ねえ、私に何を期待してる?」

ついでに聞いておいた。

彼の口からは

思いがけない言葉

「可愛い赤ちゃん」

結婚もしない

子供も要らない

結婚するといえば、別れも辞さない

そう宣言していた彼。

いつもならこんな事を言ってすぐに心を閉じてしまう

でもその日はそんなことは起こらなかった

「またまた、嘘ばっかり。」

ちょっと自分を守ってしまった。

でも彼はやめない

「どんな子がいい?」

初めての優しい会話

「あなたに目がそっくりな子」

自転車をこぎながら

手をつないだ

彼の心にずっと

灯りが灯り続けられるように・・・

そう願った